平成31年度 入学式

4月9日、前日の雨と打って変わり穏やかな晴天に恵まれて、トキワ松学園中学校高等学校入学式が行われました。真新しい制服に身を包み、少し緊張した面持ちで式に臨んだ新入生中学55名、高校139名の新たな学校生活の始まりです。

入学式での式辞の一部をご紹介します。

・・・さて、トキワ松学園は大正5年に創立され、大正・昭和・平成3つの時代を繋ぎ、そして新たに4つ目の令和に歩みを進める伝統ある学校です。創立者の三角錫子先生は渋谷の常磐松町に、女学校に行けないけど学びたいという女子が、自由に正しく学べる場を作りたいと学校を作られました。そしてこのような言葉を残されています。

『長い年限を女学校に行かれないけれども、学びたいという人のために建てた学校である。皆が自由に楽しく学べばよい。子供たちがめいめい持って生まれた天分を伸ばしてあげればよいのだ。今のように、女学校の卒業証書が嫁入り道具のタンスならば、ここ(トキワ松学園)は行李にも及ばない、小さな風呂敷ぐらいの物であろう。なにとぞ小さくともその中にしっかりとした鋼鉄に一輪のすみれの花を添えて包んで行って欲しい。』という言葉です。トキワ松学園は決して大きな学校ではありませんが、この三角錫子先生の「鋼鉄に一輪のすみれの花を添えて」という言葉にあるように、「鋼鉄」のような強い意志と、社会生活の中で強く生きていける力を持ちながら、「すみれ」にあらわせるような優しさや感性の豊かさをも兼ね備えてほしいと考えています。このことはトキワ松学園の建学の精神として教育にしっかりと根付いていることです。

先日、女性が教育を受ける権利を訴え、2014年に史上最年少の17歳でノーベル平和賞を受賞した、パキスタン出身のマララ・ユスフザイさんが「国際女性会議」での講演等のため初来日しました。マララさんは新聞のインタビューで「女子教育への投資の重要性を、世界のリーダーに訴え続けていきたい」と語っていました。世界銀行が18年に発表した女子教育に関する報告書などによれば、世界の6~17歳の女子のうち、約1億3200万人が学校に通えずにいるそうです。特に低所得国では、初等教育を修了する女子は3分の2に満たず、日本の中学に相当する前期中等教育を終える人は3人に1人とのことです。マララさんは「初等教育を受けても、多くの女子が結婚や出産などを理由にその後の教育の機会を奪われている。中等教育まで受けることの大切さを伝えて生きたい」と述べていました。

皆さんは現在、自分たちで学校を選んで自由に学ぶことのできる幸せな環境に身を置いています。どうか、このチャンスを最大限に生かし、多くの人のため、また社会の発展に役立つ活躍のできるように、自己を高めて行って欲しいと思います。

この4月1日、新元号が発表されました。皆さんもどのような元号になるか、興味を持って待っていたのではないでしょうか。そして選ばれたのが「令和」。出典は、万葉集の「梅花(うめのはな)の歌32首」の序文から引用されました。「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ。一人ひとりの日本人が明日への希望と共にそれぞれの花を大きく咲かせることができる」という意味と願いが込められているそうです。

元号の付け方には「元号法」というものがあり、ルールが決められています。その中の一つに「良い意味を持つもの」というものがあります。これまでの「平成」もまた、中国の古典『史記』の「内平外成(内平らか〔たいらか〕にして外成る)」と、『書経』(しょきょう)の「地平天成(地平らか〔たいらか〕にして天成る)」と言う言葉から取られています。まず国内が平穏になれば国外のことも平穏に成る。人の営みが平和なものになれば、天もまた平和と成るに違いない、そうあって欲しいと言う願いから選ばれた言葉でありました。

元号に込められる思いのように、いつの時代でも、次の時代が平和や繁栄が訪れるようにと願うのは当然のことだと思います。「令和」と変わる、これからの時代を築いていくのは皆さんです。平和で豊かな時代を築いていくためには、皆さんが、確かな知識と強さを持ち、それに加えて豊かなコミュニケーション能力を兼ね備えること、すなわち冒頭でお話ししました「鋼鉄とすみれ」の心を兼ね備えることが必要なのです。

また、私は皆さんに次のようなことを実践してほしいと思います。『努力をして何かに達成感を得たら、皆にその成功に続く素晴らしさを伝えよう。悲しみを覚えたら、悲しい気持ちの人を慰めてあげられる人になろう。楽しいことがあったら、みんなで喜べるように分かち合おう。ためになることを知ったら、その知識をみんなで共有しよう。』人間は何事も一人の力ではできません。たくさんのことを共有し合い、支え合って生きていかなければなりません。そこに平和や豊かさが生まれていくのです。

また、皆さんがこれから何かに挑戦して、成功や失敗を経験していくことは、どんなことでも誰かの役に立ち、いつか必要とされることで、無駄な経験というものは一つもありません。ですから、何があってもくじけず、あきらめないで前へ進みましょう。もし行き詰ったら一人で抱え込まず誰かに相談しましょう。家族・友達・先生など、わかってくれる人は必ずいます。繰り返しますが、このトキワ松学園で多くのことに挑戦してください。我々教員は、共に歩んで皆さんの背中をそっと押していきます。

改めて、「新入生の皆さん、ようこそトキワ松学園へ」。皆で充実した楽しい学園生活を送りましょう。